ああ、待っとってくれたんじゃねぇ~
2026.7.24
かつて、私が大学病院の勤務医だった頃のことです。
長いこと糖尿病で通院していたAさんがいろいろな合併症を起こし、ある日入院することになりました。
残念ながら、病状からして近いうちにお迎えが来るだろうという状態でした。
私は最期までAさんを診たかったのですが、ちょうど翌日から出張があり、どうしても遠くへ出かけなければなりませんでした。
広島に戻ってくるのは翌々日。きっと最期には立ち会えないだろうと、他の先生がたに後を託して新幹線に乗りました。
それはハードスケジュールの出張だったので、帰りの新幹線にもやっとのことで滑り込むような忙しさでした。
新幹線の席につき、やれやれとホッとした瞬間、ふとAさんのことが頭に浮かびました。
「Aさん、まだ息があるかな?」とイメージしてみたら、なんとなくまだ大丈夫な気がしたのです。これは間に合うかもしれない・・・
広島駅に着くなり大急ぎで病院に戻ったところ、Aさんはもう意識はないですが、心拍数は安定していました。
私はホッとして、小さく「Aさん、帰ってきましたよ」と声をかけて病室を出ました。
その日の深夜、Aさんは静かに息を引き取られました。
「ああ、私にお別れの挨拶をさせてくれるために、待っとってくれたんじゃねぇ」と心の中で感謝しながら、Aさんを見送ることができました。
医学的には少し不思議なことですが、臨終の際にはこういったことが良く起こります。悲しい場面ではありますが、人間の力ってすごいなと感じます。

思い出すと今でもウルっと来てしまいますね
